2023/06/27
・犬のクッシング症候群の原因と症状
・クッシング症候群の診断
・クッシング症候群の治療
・クッシング症候群の合併症

犬のホルモン疾患の一つであるクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)は多飲多尿や脱毛で発見されることの多い疾患の一つです。また、糖尿病などとの併発も多く、生涯に渡って管理の必要な病気になります。適切に管理すれば予後の悪い疾患ではありませんが、合併症への対処が必要です。
犬のクッシング症候群の原因
副腎皮質機能亢進症は慢性的に過剰なコルチゾール分泌によってさまざまな身体的変化が生じる疾患です。自然発生性の原因は脳の下垂体依存性(PDH)と副腎腫瘍を原因とする副腎依存性(AT)があり、犬ではPDHの発生頻度が85%程度を占めます。
クッシング症候群の症状
症状としては多飲多尿や多食、腹部膨満、皮膚の脱毛、石灰沈着(黒ずみ)、菲薄化などがよくみられます。また,検査所見として、白血球の異常、肝数値の上昇、高脂血症、尿検査における低比重尿や軽度な蛋白尿などが特徴的です。クッシング症候群にもいくつかタイプがありますが、一般的にはステロイドホルモンの過剰をイメージすると症状が把握しやすいかと思います。
クッシング症候群の診断
臨床徴候および検査所見からクッシング症候群が疑われる場合、副腎の超音波検査や内分泌学 的検査を実施します。超音波検査による副腎の評価ではサイズを確認し、厚みが7~ 7.5 mm を超える場合は肥大と判断する(動物のサイズにのり多少前後します)。両側性の肥大がみられる場合はPDH(下垂体由来)、片側性である場合には AT (副腎腫瘍由来)を疑い診断を進めます。クッシング症候群を診断するための内分泌学的検査としては、簡便に実施できるACTH 刺激試験がもっとも選択されています。ACTH 刺激後の血中コルチゾール濃度を診断に用い副腎皮質機能亢進症と診断する(薬剤を注射する前後に間隔を空けて採血をします)。さらにPDHとATの鑑別には超音波検査以外に内分泌学的検査である内因性ACTH 濃度が利用できます。PDHの場合、CTやMRIといった画像検査が推奨される場合もあります。
クッシング症候群の治療
治療方針は原因(PDHまたはAT)によって異なり、さらにPDH の場合は下垂体腫瘍の大きさを考慮する必要があります。ただし、犬の下垂体腫瘍の多くは小さいことが多いため、内科療法が選択される症例が多く、トリロスタンなどが代表的な治療薬として挙げられます。PDHの治療法にはトリロスタンなどを使用した内科療法、下垂体腫瘍の切除を目的とした外科療法、下垂体腫瘍の縮小を目的とした放射線療法があります。内科治療の悪かったり、CTやMRIで大きい腫瘍がある場合には大学病院や2次病院での治療が必要になるかと思います。
クッシング症候群の合併症
クッシング症候群の合併症としては、糖尿病、膵炎、高血圧、細菌感染症(膀胱などの泌尿器や皮膚)、血栓症などが多いです。特に糖尿病ではバックグラウンドにクッシング症候群があるとインスリンの効きに影響したりと相互に影響する事が考えられますが、比較的良好に維持できる犬が多い印象があります。
※参考文献:犬の治療ガイド2020. 2020,8,1.p475-478
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