2023/06/08
 ・犬猫のてんかん発作の定義
 ・てんかんの診断と分類
 ・てんかんの治療方針
 ・自宅でのてんかん発作の対応

犬や猫のてんかんは臨床的に「24 時間以上の間隔を空けて少なくとも2回以上の非誘発性てんかん発作を示す」病態です。てんかんの原因によって治療反応の良し悪しには差異がありますが、飼い主ができる発作時の対応や予後についてご紹介します。
てんかんの診断と分類
てんかんの診断
てんかんの定義は上述のとおりですが、診断には一次診療で対応できるレベル〜専門機関の受診が必要なものもあります。一次診療で可能な診断では、「24時間以上の間隔を空けて少なくとも2回以上のてんかん発作が認められること」、「身体検査、神経学的検査、血液検査、尿検査などに明らか異常がないこと」、「年齢」「猫では特に感染症の除外」によって総合的に判断していきます。
 
てんかんの分類
てんかんは「特発性てんかん」と「構造的てんかん」に大別されます。構造的てんかんは、脳に何らかの器質的病変が認められるもので、脳奇形や脳腫瘍、 脳炎、外傷などが原因の場合です。確定診断にはMRIやCT検査、脳脊髄液検査などが用いられます。一方で「特発性てんかん」はそのような検査では異常が認められないてんかんです。特発性てんかんの中には、遺伝性であるものも含まれますが、その判別によって対処が変わるわけではありませんので、まずは特発性か構造的かの判別が重要です。
てんかんの診断と治療方針
基本的には抗てんかん薬の投与にはなりますが、構造的てんかんの場合は原因疾患が取り除かなければ治療反応はよくありません。実際にてんかん発作がある場合であっても年齢や健康状態、経済状況などからMRI検査までは受けない犬猫は多くおり、治療反応の良し悪しによって「おそらく特発性である」という状態の子も少なくありません。
 個人的には、感染症や脳炎などの原因でなければ、仮に脳腫瘍であっても手術や放射線治療を望まないと決めている場合には、あまりMRIやCTを撮る意義は小さいように思います。
 治療は犬と猫によって選択する薬剤や優先順位が異なりますが、ゾニサミドやフェノバール、レベチラセタム、臭化カリウムなどの単剤または複数投与になります。
 当院でも基本的には推奨された順序でお勧めすることが多いですが、薬剤の種類によっては管理の煩雑さなどにも差があります。
 ゾニサミドは一般的に犬では第一選択で使用するエビデンスレベルの高い薬ですが、血中濃度のモニターが必要なため、定期的な採血が必要になります。検査せず、やむを得ず治療反応によって盲目的に処方するケースも実際にはあるのですが、例えばレベチラセタムは血中濃度の上昇が早く、濃度測定も不要です。有効性のエビデンスであったり、薬価であったりと選択理由は様々ですが、第一に使用する場合も多くある薬です。

自宅でのてんかん発作の対応
てんかん発作は自宅にいる際に急に痙攣を起こしたり失神を起こすため、飼い主はパニックになることも多く、とても不安な状況が起こりうる疾患です。
人間では運転中や立位での発作に伴い外傷が起こりやすい状況ですが、動物ではそのような状況にはなりにくいです。また、心配のあまり気道を確保しようと舌を引っ張ろうとする方もおりますが、危険ですので絶対に口は触らないようにしましょう。意識がない状態で噛まれると非常に危険ですし、痙攣しても舌で窒息するリスクは低いので、慌てずに介抱しましょう。
また、発作時の状態や持続時間が診断には必要なので、余裕があればスマホで撮影しておくことが重要です。
持続時間が1分前後のことが多いですので、落ち着いてから獣医師に連絡すると良いかと思います。
※参考文献:
猫の治療ガイド2020. 2020,8,1.p471-475
 犬の治療ガイド2020. 2020,8,1.p559-562
 
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