猫の歯周病

歯周病は猫においても日常的に遭遇する口腔疾患であり、2歳以上の 80 % の猫で何らかの歯周病の徴候を認めるといわれています。
高齢になっても軽度の歯肉炎を呈するのみの猫もいれば、若齢にして歯周病により歯槽骨(歯を支えている骨)の吸収が進行している場合もあります。

・歯周病の概要
・歯周病の進行度合い
・抜歯という選択
・猫の歯周病予防


猫の歯周病


往診では、食べ方がおかしい、口周りの涎が多い、食欲がないなどを主訴とする猫が多くいます。全身の精査と口腔内の状況から歯周病が疑われる場合、まずは投薬でのコントロールを試みますが、多くの場合は老齢で、外科手術を強く希望しないケースでもあります。
鎮痛などの時間稼ぎでも再度食事を取れるように維持できる場合も多々ありますが、そうでない場合は飼い主も外科的な治療を検討せざるを得ない状況になります。
老齢であっても歯周病との関連のない臓器障害が特にない場合は直接の死因とはなりにくいため、麻酔下の手術をしないことが必ずしも最適な選択ではないことがあります。
そのような悩みを少しでも減らすため、若いうちから予防に取り組むことが重要です。



歯周病の概要

歯周病は歯を支える歯周組織が破壊・吸収されることで歯を失う進行性の炎症性疾患であり、その発症要因は歯垢(プラーク)中の歯周病原細菌であるため、プラークコントロールの可否が歯周病の進行に大きく関与すると言われています。一方、歯石が付着することはそれ自体が悪さをするわけではありませんが、表面がザラザラと凹凸をもつことで歯周病の原因であるプラークを付着させる増悪因子となっているため、付着した歯石を機械的に除去するスケーリングも歯周病の治療の1つになります。
つまり、歯周病の予防には歯垢の除去が必要であり、その悪化を防ぐためには歯石除去も有効となります。
ただし、無麻酔で見える部分(歯肉より上部)のみをスケーリングすることは歯肉下のケアにはならないため、根本的な解決には麻酔下での処置が必要な場合があります。



歯周病の悪化とステージ分類

歯周病は悪化すると歯を支える骨の吸収が進み、歯肉の退縮や歯の動揺が認められるようになります。さらに進行すると、口腔鼻腔瘻(口と鼻の間に通り道が出来ること)や外歯瘻(歯の外側の皮膚に穴が空くこと)などの重篤な続発症を引き起こしたり、臓器(腎 臓・心臓・肝臓)に影響を及ぼしたりします。そのため、どのような治療が必要か、それぞれの歯ごとに歯周病のステージを判断することが重要になります。歯周病は大きく分類すると,その進行程度により歯肉炎と歯周炎に大別されます。



歯肉炎

歯肉炎は原因(細菌性プラーク)が除去されれば治癒する可逆性の炎症です。歯肉に発赤を伴う炎症を認めますが、歯槽骨の吸収はないため歯肉退縮はなく、歯槽骨縁の高さは正常です。
適切な処置を実施すると炎症は消失します。



歯周炎

歯周炎は歯肉を含め歯周靭帯、セメント質、歯槽骨に及ぶ不可逆性の炎症性の病態です。
重症度によって3段階に分けられます。



歯周病の進行度合い

歯周病の病態として、歯肉炎、軽度歯周炎、中等度歯周炎、重度歯周炎(ステージ1~4)の4段階に分かれます。このステージは個体ごとではなくそれぞれの歯について判定されますが、ステージによって治療選択肢が異なります。


猫の歯周病


抜歯という選択

歯周病が軽度である場合はスケーリングなどのケアである程度の進行予防が可能です。仮に抜歯が必要な状況であっても、抗菌薬や消炎鎮痛剤の投与で状態をキープすることと麻酔のリスクや年齢などを勘案して治療方針を決定します。
基本的にはステージ4もしくはステージ3の一部の歯周炎罹患歯については、抜歯が必要となります。
治癒後は自宅でのデンタルケアの指導を行い、口腔衛生管理を継続することで歯周病の再発、悪化を防ぐことが可能です。しかしながらデンタルケアが継続できない場合は歯周病は容易に再発します。



猫の歯周病予防

犬と比較して、猫の歯磨きやデンタルケアは困難であることが多いです。可能であれば、若齢のころから口腔内を触られることに慣れさせ「歯磨き=嫌なことではない」という条件付けをすることが重要です。最終的に歯ブラシによる歯磨きが1日1回できることを目標にします。反対に、歯周病が進行してからでは口を触られることに拒否感を示す猫が多いため、あくまで歯周病が進行する前の予防として行うことが重要です。



記事執筆者
長江嶺(金乃時アニマルクリニック・獣医師)
略歴:東京都内の動物病院、神奈川県内の動物病院の勤務医を経て、現在は横浜市を診療エリアとする往診専門の動物病院を運営しています。詳しいプロフィールはこちらです。

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