犬の血管肉腫と緩和ケア症例

・犬の血管肉腫の症状
・犬の血管肉腫の治療
・緩和ケアと痛みのタイプ


犬の血管肉腫と緩和ケア症例


本日は犬の血管肉腫の概要と緩和ケアをご紹介します。
血管肉腫の治療は第一選択として外科療法、加えてドキソルビシンなどの化学療法(+免疫療法)が主体ですが、その悪性度の高さから診断時には予後不良である事も比較的多く、緩和ケアに進む方も多い腫瘍でもあります。



犬の血管肉腫の症状

初期症状は部位によって異なりますが、検診などで脾臓や肝臓、皮膚、膀胱などに認められる無症状のものもあります。発生部位により内臓痛、体性痛、神経障害性疼痛を及ぼすもの、肺への転移では呼吸苦などもあります。また、貧血や虚脱で発見されることもあり、脾臓や肝臓の血管肉腫は腹腔内出血、右心耳の血管肉腫は心嚢水の貯留や心タンポナーデによって腫瘤が発見されることが多くあります。合併症として播種性血管内凝固(DIC)症候群を併発しやすく、DIC の基準を満たす症例は40%以上に及ぶとされています。



犬の血管肉腫の治療

外科療法

脾臓や皮膚腫瘤など、切除可能な範囲であれば外科適応となりますが、事前に出血性ショックや貧血、DICなどへの対処が求められます。また、心タンポナーデの可能性の高い右心耳発生の場合は姑息的に心膜切除を行う場合もあります。


化学療法

ドキソルビシンを主体とした化学療法が行われる事が多いですが、外科手術ありきの治療にはなります。また、通常の化学療法が適用できない場合、副作用の少ないシクロホスファミドやNSAIDsを用いたメトロノミック療法や血管新生抑制治療が行われる事があり、完治は望めないものの多少の延命効果は認められています。

免疫療法

肺塞栓症などの報告もありますが、副作用の少ない治療や追加治療としてインターフェロンγや活性化リンパ球療法、樹状細胞療法などが用いられています。



緩和ケアと痛みのタイプ

腫瘍=痛みがあるというわけではありませんが、腫瘍の発生部位や障害部位によって主に3種の痛みが存在すると言われており、その部位によって対処も異なります。
主に皮膚、骨、筋肉などの体性痛、食道〜腸、肝臓や腎臓などの内臓痛、そして痛みの伝導路である末梢神経や脊髄、脳などの神経障害性疼痛です。


犬の血管肉腫と緩和ケア症例


体性痛の鎮痛

手術の切開や打撲などのような機械的な刺激で、第一にNSAIDsなどの鎮痛剤が使用されます。突出痛に対してレスキュー薬の使用が重要です。体動で増悪する事があり、患部から離れた部位で起こる関連痛がある事も認められています。

内臓痛の鎮痛

痛みの発生する場所によって悪心や嘔吐を伴う事があり、制吐薬や消化管運動を補助するような投薬を行う事もあります。また、オピオイドがよく反応する場合が多く、トラマドールなどの鎮痛薬、シール状のフェンタニルパッチなどが使用されます。

神経障害性疼痛

がんによる神経の圧迫などで痺れや電気が走るような痛みが特徴です。ガバペンチンやリリカなどの神経疼痛鎮痛剤が使用されます。

実際の緩和ケア症例

上記のような鎮痛をはじめ、呼吸苦に対しては酸素ハウスの設置などで対応します。
鎮痛薬には意識レベルを低下させたり、食欲を落としたりといった負の側面もありますので、闇雲に鎮痛薬の量や種類を増やすわけではなく、症状や痛みの場所に則した鎮痛が必要です。
実際の症例では、痛みだけでなく下痢や食事、投薬介助なども問題になります。
また、血管肉腫に合併しうる出血やDICなどへの対処も必要ですが、外科手術なしでの使用に対するエビデンスのない投薬もあるため、状況に応じて取捨選択していかなければなりません。
日常的にお世話をするのは飼い主さんですので、飼い主さんも理解を深め、犬が出来る限り快適に過ごせるよう努めることが重要です。



記事執筆者
長江嶺(金乃時アニマルクリニック・獣医師)
略歴:東京都内の動物病院、神奈川県内の動物病院の勤務医を経て、現在は横浜市を診療エリアとする往診専門の動物病院を運営しています。詳しいプロフィールはこちらです。

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